インドの食文化のこと 4 地方による違い

前回の記事はこちら インドの食文化のこと

前回の3では、インド的体調を整えるための食事の工夫について書きました。今回の4では、地方による違いについて書きたいと思います。

地方による違い

北はヒマラヤ山脈がそびえ、中央部にはデカン高原があり、東にはガンジス川、西には砂漠、土漠地帯が広がっています。

黄色いところがインドです

海岸沿岸部は、熱帯性の気候で一年中日本よりもずっと暑いです。寒帯から熱帯、多雨から砂漠地帯と、気候だけ見ても非常に様々。それだけに、そこで採れる野菜など作物も違いますから、それが食文化にも影響を及ぼしています。

民族や宗教も多種多様ですので、単に東西南北と分けるだけでは分けきれないのですが、今回は大まかに東西南北の違いを書いていきます。

北インド

首都デリーを中心とした地域から北側

主食:チャパティ・・・小麦を発酵させないで作るパン
   ナン・・・・・・小麦を発酵させて作るパン

ムガル帝国の影響を受けていて、カシューナッツやアーモンドなどのナッツ類を入れたカレーが良く食べられています。肉料理が多く、乳製品を使ったコッテリクリーミーな味つけのものが多いです。

ひよこ豆カレー、タンドーリーチキンは北インドの料理です。

油は菜種油、ギーを使うことが多いです。

ヒマラヤ山脈の方行くと、山岳民族特有の食文化へと変わっていきます。

西インド

インド洋に面したムンバイ(旧名 ボンベイ)がある地域で、パキスタン寄りの砂漠地帯も含みます。

主食:チャパティとご飯の両方を食べます。また、雑穀類も良く食べます。

グジャラート州はジャイナ教徒の方が多く住む地域でヴェジタリアンの方が多いことで有名です。そのため、野菜や豆を良く食べます。野菜カレー、豆カレーの種類が豊富です。辛みが少なく、割とあっさりした味付けです。

アサフェティダ(ヒング)という独特の香りがするスパイスを良く使います。

ここは味付けが甘辛く、他地域とは全く違う独自の料理があります。

西海岸地域は、魚介類が豊富に使われます。

油はピーナッツ油を使うことが多いです。

南インド

ケララ州、タミルナードゥ州を中心とした一番南側の地域。スリランカにも近いエリアです。

主食:ごはん 稲作がさかんで、米粉を使った料理も多く、※の種類も豊富です。

乳製品よりもココナッツミルクを良く使い、汁気の多いさらっとした料理が特徴で、味付けは絡めです。

マサラドーサ、サンバルなどが有名です。紅茶よりもコーヒーが良く飲まれています。

油はココナッツ油を使います。

東インド

ガンジス川とブラフマプトラ川があり、その大デルタ地帯は、ベンガル湾からの南西風季節風の影響を受けているので雨が多く稲作地帯となっています。

コルコタは18世紀から20世紀初頭にかけてイギリス領インドの首都でした。なので、英国風の建築物が今でも数多く残る地域です。他地域ではあまり食べられない淡水魚を良く食べます。

インドでは、亡くなった方を火葬する場所をガートと呼び、川沿いでその儀式の多くは行われます。すべての人が火葬されるわけではなく、残された人たちの財力が影響をしています。薪を買える人は火葬をして弔い、買えない方はそのまま水に流し弔います。

このことより、淡水魚を食べる習慣はあまりありません。けれども、東インドは河口部というのもあるのでしょう、コイなどの淡水魚を良く食べる地域です。

北の方のアッサム州、ミャンマーと近い地域などはまた違う食文化を持っています。

主食:ごはん、チャパティ

野菜、肉、魚、卵とバラエティに富んだ食材が料理に使われています。

甘いお菓子が美味しいことでも有名で、ベンガルスイーツは一種のブランド名と化しているそうです。ちなみにお菓子のことを(甘いこと総称も)ミターイーと言いますし、淡水のことをミーターパーニー(甘い水)海水のことを、カーラーパーニー(塩辛い水)と言います。

油はマスタードオイルを使います。これが個人的に好きです、私。

まとめ

北へ行くほど小麦比率が上がり、南へ行くほどお米比率が上がる。

西へ行くほど中近東っぽい雰囲気が濃くなり、東へ行くほど東南アジアの影響が濃くなっていく。

かなり大まかにまとめると、こんな感じでしょうか?

今回は大きく4つに分けただけですが、そこからさらに州に分けるとまた細かい違いがありますし、ヒンドゥー教徒、イスラム教徒、シク教徒、仏教徒、ゾロアスター教徒など信仰する宗教によっても違います。

同じヒンドゥー教徒と言っても、信仰する神様の違いでも違いがあります。また、良く聞かれる「カースト(ジャーティ)」によっても違いがあります。

私たちはインド人と聞くと、ターバン巻いているイメージがありますが、当然のごとくインド人がみんなターバンを巻いているわけではありませんし、いろんな日本人がいるのと同様にいろんな人たちがいます。

日本で最初のころに広まったのは北インド料理を出すインド料理屋さんでした。いわゆる宮廷料理風なイメージでしょうか?

インドでは、おもてなし料理にはたくさん油を使うのが礼儀のようなもの。油が多いほど浄性が上がると考えられています。

ギーたっぷり、お肉たっぷり、乳製品やナッツこってり、の贅沢料理です、インドの方々が毎日食べている料理ではありません。当然、和食になれている私たちが食べると、胃にもたれるのは当たり前。

年齢に伴って私も、20代のころは毎日でも食べたい!と思っていたこのこってり系を、今では月に一度か2,3か月に一度でいいかな?たまに食べるのが美味しいよね、と思うようになりました。

編集後記

インド=ターバン インド=カレー こんなイメージですが、本当は違う。

文化も宗教も多種多様。それに伴って食文化にもこんなに違いがあるんだよ、とお伝えしたくて書いてみました。

10年ほど前から南インドブームで、南インド料理を食べられる機会や場所が増えました。また、インドに限らず海外から来日し住んでいらっしゃる外国人の方は年々増加しています。

島国で日本以外は海外、つまり海の外。そういう歴史を持つ私たちは思いのほか閉鎖的です。そして、外国人の方に対して偏見を知らぬ間にいただいてしまうことも多い気がします。けれど、みんな同じ人間です。誰もが幸せに暮らしたいと思っているだけです。

それなのに、ただ日本の習慣と違っていたり、言葉の壁により誤解が生じることだけによって軋轢へと繋がってしまうことがあります。こうやっていろんな食文化に触れられる機会が増えることにより、相互理解が深まり、接する機会が増え、その結果、民族や宗教を超えて人々が仲良くなれることにつながるんじゃないかな?と思っています。

それに、国や民族関係なく、みんな美味しいものは好きですもんね♡

ということで、その4は地域による違いでした。続きのその5では、今回触れられなかった宗教による違いについて書きたいと思います。どうぞお楽しみに♪

続きはこちら インドの食文化の こと5(編集中)